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紅旗征戎非吾事

14 :名無氏物語:02/06/15 23:35
こんな詩もありますね。


『新古今集断想  藤原定家』

「それが俺と何の関りがあらう? 紅の戦旗が」
貴族の青年は橘を噛み蒼白たる歌帖(カイユ)を展げた
烏帽子の形をした剥製の魂が耳もとで囁いた
燈油は最後の滴りまで煮えてゐた
直衣の肩は小さな崖のごとく霜を滑らせた
王朝の夜天の隅で秤は徐にかしいでゐた

「否(ノン)! 俺の目には花も紅葉も見えぬ」
彼は夜風がめくり去らうとする灰色の美学を掌でおさへてゐた
流水行雲花鳥風月がネガティヴな軋みをたてた
石胎の闇が机のうへで凍りついた
寒暁は熱い灰のにほひが流れてゐた
革命はきさらぎにも水無月にも起らうとしてゐた。

           (安西均 1955年)

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